長野に印刷・製本が多いのはなぜか?

 とある出版団体の研修と会議に出席するために3日間の長野滞在。善光寺参りをして蕎麦を食べて連日の懇親会であった。宿泊のJALホテルは最上階のレストランに行くと遠くの山並みが見えて、風情がある。毎朝、朝食時には時間をかけて山菜料理を味わった。

 今回の研修のひとつは印刷・製本会社の見学も含まれている。長野には印刷・製本会社が多い。わたしは、岩波書店岩波茂雄みすず書房小尾俊人、筑摩書房の古田晃、理論社の小宮山量平と、出版社の創業者も多いから印刷・製本屋が多いであろう程度に思っていたのだが、見学させていただいた印刷・製本会社のみなさんの話によると、①関東大震災後に東京から移転させた、②松代大本営の付近に印刷・製本業を集中させたを、という歴史的理由以外にも、現在でも長野は③製本に使用するニカワの乾き具合が土地の湿度に適しているという利点がある、とのことであった。

 

 

 

夏休み前半にはKindleで4冊の本を買った。

 菊地成孔東京大学のアルバートアイラー』、つづいて最相葉月絶対音感』を読了し、米澤積信『王とサーカス』にとりかかる。3つともKindleで購入したが、なんと『東京大学〜』は固定フォーマットなので、文字の大きさを調整できない。PDFでは文字が小さすぎてとてもデバイスで読むことはできなかった。商品としてはいかがなものかと愚痴りながら、返品の方法もわかるわけもなく、仕方ないから文庫本で買い直した。そのほか、これもまたKindleで『反知性主義』を注文した、つもりであったが、よく見たらわたしが押したのは「購入」ボタンではなくて「予約」ボタンであったようだ。いつでもどこでも読みたいときに読めるはずの電子書籍に「予約」は必要ないだろう、と思う。

もしかしたら、電子書籍などというものはまだまだ我々の生活に根付いてはいないのではないかと思いながらも、いっぽうで『王とサーカス』はこの間書店店頭で平積みになっているのをさんざん目にしたの記憶が鮮明に残っており、今日Kindleで買ったのである。書店に高く積まれていた印刷本をみないことにはKindleだけではおそらく買うことはなかった。書店店頭がショウウィンドウ機能となって電子書籍を買うという購入パターンがすっかり定着してしまっている、ということ。

そんなこんなで半分過ぎた2015年の夏休みであった。

 

 

 

絶対音感 (新潮文庫)

絶対音感 (新潮文庫)

 

 

王とサーカス

王とサーカス

 

 

ジャズの印象批評

 多くの日本のジャズ研究は長い間、印象批評の域をでなかった。そのミュージシャンの人となりや人脈や師弟関係を取り上げ、その音楽との関係を記述する、往々にしてジャズメンの破天荒ぶりにフォーカスし、ドラッグが音楽に与えた影響などに言及するという作風が多かった。そのこと自体に罪は無く、音楽史というジャンルが成立するのであるから、そういう事実を実証的にたどってゆくのもれっきとしたジャズ批評であるとはまちがいないのであろうが、同時にジャズ研究においても音楽理論に基づいた研究がもっとなされてもよいはずである。日本のジャズ批評でこのような音楽理論に基づいた研究を行っているのはほんの数えるほどしかいない。

 図書館で『チャーリー・パーカー技法』を借りて、駅前の本屋で『憂鬱と官能を教えた学校』を買って、Amazonで『東京大学アルバート・アイラー』を購入する。

 『技法』はさすがに歯が立たない。いろいろ言われてはいるが、やはり菊地成孔はその意味で、現代におけるジャズ理論啓蒙家として第一人者であろう。だが、濱瀬氏の『技法』はまったくわたしには歯が立たない。気分はわかるのであるが。

 駅南口の、初めて訪れる喫茶店で少しのあいだだけ読書。

 

チャーリー・パーカーの技法――インプロヴィゼーションの構造分析
 

 

 

 

 

M-base派とMiles Okazaki

 1980年代にブルックリンのジャズミュージシャンが集って形成されたM-BASE派。当時、新伝承派とよばれるウィントン・マルサリスらの「懐古趣味」の演奏とは一線を画した、進歩的なこのグループを、わたしはよいと思って聴いたことがあまりなかった。伝統的なジャズから一歩進んで、しかしフュージョンやロックやヒップホップに傾倒するのではなく、あくまでもジャズの範囲に留まりつつ、そのあやうい変化を内在化する。そういった進歩的な姿勢には賛同するのだけれども、カサンドラ・ウィルソンジェリ・アレン、グレッグ・オズビーの音を聴くと、最初こそは聴き入ってもみるのだけど、すぐに飽きてしまうのであった。もっとも私がこのM-BASE派を聴いていたのは2000年前後だから同時代の評価はまたべつなものだったのかもしれない。

 そのM-BASE派の流れを汲むブルックリンのギタリスト、マイルス・オカザキのCDを購入した。例によってAPPLE MUSICでサーフィンをしてネットで注文。

 

Generations by Miles Okazaki (2009-04-07) 【並行輸入品】

Generations by Miles Okazaki (2009-04-07) 【並行輸入品】

 

 ■Miles Okazaki(g), Miguel Zenón(as), Thomas Morgan(b), Dan Weiss(ds)

 

 浮遊感のあるなギターに切れのよいアルトが切り込んでくる。やや実験的な色がありつつも、技巧派のギターで独特の世界観を形作っており、他の3人もそれに追随している好演である。マイルス・オカザキ自身はこれまでに3枚のCDを発表し、日系人を思わせるその名前から、日本でも数年前に「知る人ぞ知る」というマニア向けのギタリストして知られたようである。

 そういえば、ケビン・ユーバンクスもM-BASE派に近いところで活動していたようだし、それにグラスパー一派のなかにはM-BASE派の影響を受けているミュージシャンも少なくはないと聴く*1

 

  *     *     *

 

晴れ。気温が相変わらず上昇しているので外にでたら危険。自宅で『チャーリー・パーカーモダンジャズを創った男』を読み始める。この本は名著だなあ。

 

 

 

*1:M-BASE派が現代ジャズに与えた影響については柳楽光隆氏が「Mベースが今日のジャズにもたらしたもの」に記している

ケビン・ユーバンクスの入手できない2枚。

 すでに身体の一部になってしまったApple Musicで連日サーフィンをしていたらケビン・ユーバンクスを見つけた。ケビン・ユーバンクス.....。いまひとつメジャーにこそなれないが、デビュー当時はアート・ブレイキー・ジャズメッセンジャーズの一員として、輝ける80年代のウィントン・マルサリスとともに活躍していた。ジャズメッセンジャーズには歴史的にギタリストは珍しいので、そういう意味ではとても希少な経歴をもつギタリストといえるだろう。ソリッドなギターがとてもかっこ良い。時代によって、どフュージョンにはしった時期もあるが、コンテンポラリー系の技巧派ジャズギタリストのなかでは、そのピッキングの強烈さなどから異彩を放っていたひとりである。

 そのケビン・ユーバンクスのアルバムで見つけたのがこの2つ。

 

   Kirk Lightsey Trio / From Kirk to Nat(2009)

            Kevin Eubanks Group “Live”

 

 前者はKirk Lightseyトリオでのライブ。ピアノ、ベース、ギターというやや変則的な編成だが、三者のリラックスした演奏のなかでも緊張感のあるケビンのギターが聴ける。曲によってはヴォーカルがすこし違和感がありつつもトータルでは好演。

 

FROM KIRK TO NAT

FROM KIRK TO NAT

 

 そして、後者の Kevin Eubanks Group “Live”。こちらのほうがケビン節全開といったところだろうか。

 

www.amazon.com

 

残念なことに2枚とも日本では手に入らない。そのうちどこかで出会えることを期待しつつ。

  *     *      *

  昨日は高円寺の古本屋で友部友人の『ニューヨークの半熟卵』を買い、本日は北米ボルティモアのCDショップからマーク・キャリー・フォーカストリオのFOR DIRECTIONSが届いた。

  今日も暑い1日。いったいいつまでこの猛暑、続くのであろうか。

 

 

 

ニューヨークの半熟卵

ニューヨークの半熟卵

 

 

 

Four Directions

Four Directions

 

 

 

 

 

 

デリック・ホッジなどを購入

 早朝、公園となりのマクドナルドでコーヒーを飲むためにしばし外出。テラスは日陰だったのでそれなりにそよ風が吹いて心地よかったけど、8時を過ぎるとじわりと汗が出てきてすぐに自宅にむかった。自室でクーラーをかけ、CDを聴きながら読者と昼寝をしたほかは、中央図書館に出かけて、書籍を借りたり返したり。結局6冊を持ち帰る。キューバ音楽、チャーリー・パーカー、ジャズ入門書、著作権関係、北京案内、そして下中弥三郎の評伝。下中弥三郎平凡社の創設者である。その平凡社は昨年100年を迎えて社史を刊行したばかり。先日その社史を格安で社員に譲ってもらったけどまだ読めずにいることを思いだした。

 

下中彌三郎: アジア主義から世界連邦運動へ
 

 

 ユニオンによって中古CDを物色する。ジャズはとり立ててめぼしいものは無かった。気になったのはポリスのライブ盤470円とディスティニーチャイルドのライブ307円。Dチャイルドはほぼすべて307円で売られている。それだけに人気があったと言うべきか、もう人気がなくなったと言うべきか。逡巡したあげくになにも買わずに帰路についた。

 夕方AmazonからCDが2枚届く。デリック・ホッジのLIVE TODAYとネクスト・コレクティブのCOVERARTの2枚。ともに中古で1200円ほど。注文して未着のものがあと3枚ある。

 

カヴァー・アート

カヴァー・アート

  • アーティスト: ネクスト・コレクティヴ
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル ミュージック クラシック
  • 発売日: 2013/03/06
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 

ロバート・グラスパーとあと2人

不慣れな現代ジャズを、連日Apple Musicを頼りに聴きまくっていたら、情報量が多すぎてやや消化不良を起こしている。少し整理しておかねば。

ロバート・グラスパー

コンテンポラリー・ジャズのイコン。マイルスがそうであったように、グラスパーもまたすぐれたオルガナイザーなので、彼と共演するミュージシャンを一通り聴いてみれば現代ジャズはほぼ理解出来るのではないかと思われる。トリオで4枚、エクスペリメントで3枚のCDを発表している。

先週はエクスペリメントの3枚組をタワレコで購入した。トリオは未入手。トリオを聴いている限りではある時期のハービー・ハンコックに思えてくるのは、彼自身、ハービーの影響を多大に受けているとうことを随所で発言していることからもみてとれる。

 

MOOD

MOOD

 

 

 

In My Element

In My Element

 

 

 

Double Booked

Double Booked

 

 

 

Canvas

Canvas

 

 

 

カヴァード

カヴァード

 

 

○クリス・デイブ

そのグラスパー・トリオ、エクスペリメントのドラマーの一人がクリス・デイブ。ケニー・ギャレットとの共演以外は主にヒップホップやソウルシーンでキャリアを積んできたようである。グラスパーのUnrehurst Vol2、Black Radioに参加。

参加アルバムはこのあたり。自身のリーダーアルバムが2014年にBNから発売されるようなことを本人が言っていたとのことだが、いまのところその確証はない。

 

Vol. 2-Unrehurst

Vol. 2-Unrehurst

 

 

 

ブラック・レディオ

ブラック・レディオ

 

 

○デリック・ホッジ

エクスペリメントのベーシスト。リーダーアルバムは一枚のみなので、とりあえず注文した。

 

 

Live Today

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